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最高裁判所第一小法廷 昭和29年(あ)1673号 決定 1954年11月11日

主文

本件上告を棄却する。

理由

弁護人樫田忠美の上告趣意第一点について。

公職選挙法二三七条一、二項の規定は、投票が正当な選挙人により又は適法な方法によって行われないことを防止せんとするにあって、同条一項は、同法四二条、四三条等で投票することの出来ない者が投票した場合を処罰するものであり、同条二項は、選挙人でない者が選挙人の氏名を詐称しその他詐偽の方法を用い、若しくは、正当な選挙人であっても詐偽の方法を用い、投票をし又は投票をしようとした者を処罰するものである。されば、いやしくも他の選挙人の氏名を詐称し、これによって投票をした以上、投票管理者側の者がその情を知っていたと否とにかかわらず、同条二項の氏名を詐称して投票した罪が成立することは、同条一項が投票をした者だけを処罰しているのに同条二項が投票しようとした者をも処罰する点からも窺い知ることができる。それ故、結局同趣旨に出た原判決には所論の違法は認められない。

同第二点について。

論旨は量刑不当の主張であって、刑訴四〇五条の上告理由に当らない。また記録を調べても同四一一条を適用すべきものとは認められない。

よって同四一四条、三八六条一項三号により裁判官全員一致の意見で主文のとおり決定する。

(裁判長裁判官 入江俊郎 裁判官 斎藤悠輔 裁判官 岩松三郎)

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